Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
百六
ガロンヌ河はこの都会の中を流れていた。岸本に取っては縁故の深いあの隅田川を一番よく思い出させるものは、リオンで見て来たソオンの谿流でもなく、清いセエヌの水でなく、リモオジュを流れるヴィエンヌでなくて、雨に濁ったこのガロンヌの河口であった。そこには岸本の足をとどめさせる河岸の眺めがあったばかりでなく、どうかすると雨が揚がって、対岸に見える工場の赤屋根には薄く日が映った。ちぎれた雲の間を通して丁度日本の方で見るような青い空の色を望むことも出来た。つくづく岸本は郷国を離れて遠く来たことを思った。
百六
再び巴里を見るのは何時のことかと思って出て来たあの都の方へもう一度帰って行く楽しみを思い、新しい言葉の世界が漸く自分の前に展けて来た楽しみを思い、ボルドオから岸本は夜汽車で発った。今度帰って見たらどういう冷い風があの都を吹き廻しているだろう、幾人の同胞に逢えることだろう、と彼は思いやった。窓の外は暗し、車中で眠ろうとしても碌々眠られなかった。同室の乗客が皆ひどく疲れた頃に汽車の中で夜が明けかかった。
朝に成って反って気の緩んだ岸本はいくらかでも寝て行こうとした。