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Japanische Klassiker mit Furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme

Aozora Bunko

三

「世間が見えるって?」

「え。この岐阜の御城下でも、生れ故郷でも、広い天下の何処へでも、行きたい所へ行ってみる事ができます。会いたいと思うおっ母さんでも、話しする事ができるんで」

「嘘をいえ」

「ほんとですよ」

猿はまた、眼をふさいで、乞食坊主が坐禅でもするような恰好して、大真面目になっていた。

三

「こいつ少し気が変だな?」

わしは頷いた。ここへ入って来た当座、気が変になるのは、猿ばかりではない。誰でも一応は、泣いたり喚いたり、黙りこんだり、狂態をやる。

ところが、この狂態を、今度はわしがやりそうになって来た。――というのは、猿めが、母親の事をいい出したからである。永い間かかって、やっと忘れていたものを、猿のことばで、ふいとまた、思い出し始めたからである。

わしが死んでも、誰ひとりこの世の中で泣く者はあるまいが、おふくろだけは、どんなに……などと、考えても追いつかない事を悩み出すと、

(ああ、もう一遍!)

おふくろの顔が見たい。世の中の光を浴びたい。――生命が惜しい。たまらなく物狂わしくなって来る。

(戦争でもおっ始まれっ。稲葉山の城も、岐阜の城も、火の海になってしまえっ)