Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
七
「お。仕事の意地なら、果し合いでもしてやるぜ」
捨て科白を投げ返すと、七は、さっさと自分の家へ帰ってしまった。
七
「お芳どの、どこへ」
すこし汗ばむような陽気だった。杏の花の香が熟れている。
お芳は、足をとめた。森の中からこっちを向いて歩いてくる慎吾の笑い顔を見つけた。そして、彼の顔や肩へ、木の間からチラチラと射すいっぱいな日光の靨にうっとりとした。
「七の家へ行くのだろう」
「ま」
「驚いたか。余りよく知っているので」
――帰ろうかしら。
彼女は困った顔をした。
「何もかも兵助殿から聞いている。書物を取り戻しに行くのであろう」
「ええ」
「ああいう乱暴者のことだから、またどんな無態をいわぬとも限らぬ。拙者がついて行ってやろう」
「そんな心配はございません」
「分るものか。第一、そなたがあんな書物を持ち出したのがよろしくない。この間の広言も、墓あばきも、みな種はその書物から始まったのだろう」
いよいよ困った顔をして、お芳は、自分の足を見ながら歩いていた。
「墓場の屍肉から、燐ぐらいのものはとれるか知らないか、赤光を出す薬液などがとれるものか。ばかばかしい」
「ほんとに、駄目でございましょうか」