Japanische Klassiker mit Furigana
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しぶえちゅうさい
渋江抽斎
Lesen Sie 渋江抽斎 (しぶえちゅうさい) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 166.525 Zeichen · 334 Bildschirme
その百六
五百の目は直視し、口角からは涎が流れていた。
保は「おっ母様、おっ母様」と呼んだ。
五百は「ああ」と一声答えたが、人事を省せざるものの如くであった。
保は床を敷いて母を寝させ、自ら医師の許へ走った。
その百六
渋江氏の住んでいた烏森の家からは、存生堂という松山棟庵の出張所が最も近かった。出張所には片倉某という医師が住んでいた。保は存生堂に駆け附けて、片倉を連れて家に帰った。存生堂からは松山の出張をも請いに遣った。
片倉が一応の手当をした所へ、松山が来た。松山は一診していった。「これは脳卒中で右半身不随になっています。出血の部位が重要部で、その血量も多いから、回復の望はありません」といった。
しかし保はその言を信じたくなかった。一時空を視ていた母が今は人の面に注目する。人が去れば目送する。枕辺に置いてあるハンカチイフを左手に把って畳む。保が傍に寄るごとに、左手で保の胸を撫でさえした。
保は更に印東玄得をも呼んで見せた。しかし所見は松山と同じで、この上手当のしようはないといった。
五百は遂に十四日の午前七時に絶息した。
五百の晩年の生活は日々印刷したように同じであった。