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Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme

Aozora Bunko

同じ船の中の水夫の姿さえ、薄絹の奥にあるようだ。朦朧として見究められぬ水を見ようと覗いて見ても、湖水の蒼い水の代りに、乳色の濛気を見るばかりだ。

その水蒸気の壁の厚さは幾らあるとも知れなかった。白一色の曠野である。東西知らぬ迷宮である。迂濶にここへ迷い込んだ船は、ついに帰ることが出来ないだろう。纐纈城の守備としては真に無比の要害である。この水蒸気は人工らしい。その証拠には水蒸気は横へも流れず下へも降りず、滝を逆さに懸けたように上へ上へと立ち昇る。

赤い帆の船はひた駛る。

右に曲がり左に曲がり、時にはグルリと後返りをし、駸々として進んで行く。その様子が、眼には見えないが一定の航路が出来ていて、その航路に従って進んで行くように思われる。

と、忽然行手に当って太鼓の音が聞こえて来た。ドン、ドンドン、ドンと、四つ打ち、しばらく間を置いてまた四つ打つ。合図の太鼓と思われる。四辺茫漠たる霧の中で、鳴り響く太鼓の洞然たる音はまことに神秘的のものであったが、それに答えて赤帆の船から、法螺貝の音の鳴り渡ったのはさらに一層神秘的であった。

厚い水蒸気の白壁も、やがて次第に薄れて来た。