Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme

Aozora Bunko

すると、この時一点の火光が遥か行手から洩れて来た。

「あれ、ご隠居様、火が見えます」

菊丸は声を筒抜かせた。

「オット待ったり、オット待ったり」

老人は小声で制しておいて、じっとその火を眺めやった。

火は一点に止どまって、動きもせねば揺れもしない。

「まず有難い、家があるそうな」

「ご隠居様参りましょう。宿を乞おうじゃございませんか」菊丸少年はせがみ出した。

「しかし」と老人は不安そうに「あぶないあぶない用心せねばならぬ」

「なんの用心でございますな?」菊丸は少しく不平そうに云った。

「まず聞くがよい、古歌がある。『日は暮れて野には伏すとも宿かるな安達ヶ原の一つ家のうち』……うっかり宿を乞うた家が、鬼の住家なら大変だからな」

「でもここは富士の裾野で、安達ヶ原ではございません」

「うん、そういえばそれもそうだな」

「宿を乞おうではございませんか」

「おおよかろう、参るとしよう」

そこで二人は足を早め、灯の見える方へ歩いて行った。

行き着いて見れば、木立に囲まれて、一宇の館が立っていた。夜目にも凄じく荒れてはいたが、構えは堂々たる書院造り、どうやら由縁もありげである。