Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
三
おおそれは春風であった。忽然、鶯の声がした。見れば南向きの丘の麓に、白梅が蕾を破っていた。
鹿が荒野で啼き出した。
と、河原の崖の周囲を、無数の岩燕が飛び翔っていた。
優婆塞は帰って来なかった。
信徒たちは殺気立った。
「破壊だ破壊だ!」
と叫ぶものがあった。
いくつかの仏像が破壊された。
雲雀が空で啼き出した。
雪が徐々に消えて行った。そうして霞が立ち初めた。
富士のお山は笑い出した。だが未だ白無垢は脱がなかった。
やはり光明優婆塞は、教団へ帰っては来なかった。
いったいどこへ行ったのだろう? どうして帰って来ないのだろう? ――それは誰にもわからなかった。とまれ彼はあの時以来――三合目陶器師と邂逅って以来、どこかへ姿を隠したのであった。
三
土屋庄三郎昌春といえども動揺せざるを得なかった。
彼は一冬を天幕で暮らした。貴族の御曹司たる彼としては、まさに破格の生活であった。難行苦行の生活であった。食物にも不足した。着る物にも不足した。吹雪は用捨なく吹き込んで来た。しかも十分の燃料さえない。
だが彼には苦痛ではなかった。
それは法悦に燃えていたからであった。