Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
その灯火を中心に、一間四方の空間が、淡紅色に隈取られていた。そうしてその光に照らされながら、一人の若い美しい女が、河岸へ膝を突いていた。
何かを洗っているらしい。
背後は険しい絶壁で、その下部に穴があった。人穴へ通う口らしい。そうして女は月子らしい。
白い露出した長い腕を、肘の附け根まで水へ浸し、彼女は何かを洗っていた。
一つ洗っては傍らへ置き、一つ洗っては傍らへ置いた。
十数個の能面を次々に洗っているのであった。
船はゆるゆると流れ下った。
もし彼女が眼を上げたなら、船を見ることが出来たろう。そうしたら彼女は庄三郎を、船から陸へ救い上げたかも知れない。しかし彼女は一心に手もとばかり見入っていた。そうして仕事にいそしんでいた。
で、機会は失われた。
船は河下へ流れて行った。
夜であろうか昼であろうか? もう幾時過ぎたろう?
庄三郎は気絶していた。時もなければ場所もなかった。夜もなければ昼もなかった。
流れ流れ流れるばかりであった。
河水がにわかに量を増した。
枝川が一筋注がれていた。
そこを過ぎると淵であった。そうしてその頃から次第次第に、蒼い微光が薄れて来た。