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Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme

Aozora Bunko

従来の彼ならこんな事は、夢にも思わなかったに相違ない。神聖なる悪病の持ち主の彼、たとえどこへ行こうとも、歓迎などはされないだろう。故郷とは惨酷の別名であった。世間的成功をした者だけが、その故郷で容れられた。彼は、城主は、成功者ではない。故郷の甲府へ行ったところで、なんの慰めを見付けることが出来よう。

しかし彼は餓えていた。充たさるべく願っていた。食を選ばない彼であった。

彼がゆらりと立ち上がった時、部屋の戸をコツコツと打つ音がした。

「はいれ」と彼は放心したように云った。

はいって来たのは万兵衛であった。

「賓客が参りましてございます」

「そうか」と放心を続けながら、「珍らしくもないな。何者だ?」

「珍らしい賓客でございます。富士教団特有の、独木船に乗って参りました。……若い侍でございます。気絶を致しておりました。が、介抱致しましたところ、蘇生致しましてございます」

万兵衛は恭しく一礼した。

「よろしい」と城主は冷淡に、「掟通りに、……賓客部屋へ。さて、万兵衛、船の用意!」

「どちらへお出掛けでございます?」

「船の用意だ! 水門をあけろ!」

仮面の城主は繰り返した。