Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
第十七回
一
物の破壊れる音がした。誰かが何かを投げたらしい。地に落ちて破壊れたらしい。
だが悲鳴は起こらなかった。
しかし火柱は倏忽と消えた。辻を東へ曲がったらしい。
闇! 寂寥! 鬱々たる殺気!
峠を越して行く旅人でもあろう、夢見山の腹を松火の火が、点々と闇を縫っていた。
旅人よ、行き給え。
早く地獄を遁がれ給え。
しかしそっちにも焦熱地獄が、待っていないとはどうして云えよう。
木の間に隠れ、木の間を出で、松火の火は蠢いて行った。
火柱が出現したからでもあろう、甲府城下のあちこちから、叫喚の声が湧き起こった。
第十七回
一
人穴の中は暗かった。
一枚の筵が敷いてあった。藺で編んだ新しい筵であった。
端麗な女が坐っていた。身に行衣を纏っていた。
鑿で能面を彫んでいた。刃先がキラキラと火に光った。
と、部屋の戸を叩くものがあった。
女は静かに立ち上がった。束髪が地に垂れた。
閂を外して戸をあけた。外光が真珠色に流れ込んだ。
可愛いらしい子供が立っていた。
「まあ」と女は驚いたように云った。
「おや」と子供も驚いたように云った。赤い頭巾に赤い袖無し、伊賀袴を穿き、黐棹を持った、それは十三四の鳥刺であった。