Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
極重悪人の人相がなければ、極重悪人の新面を作り出すことは出来そうもない。それを作ることが出来なければ、妾は人の世へは出て行けない」
また鑿の手が止まってしまった。
眼を垂れて考え込んだ。
過去は暗く無慈悲であった。無意味な禁慾の生活であった。楽しい思い出は一つもなかった。鑿一本一心不乱、無性、精進の生活であった。
そうして将来には光明はなかった。
どうしたらいいだろう? どうしたら?
「いけない、いけない、こういう考え方は」
彼女は心を取り直した。
「彫むことにしよう、これまで通り。何かを掴むに相違ない」
彼女は鑿を揮い出した。
と、その時、コツコツと、入口の戸を叩く者があった。
「坊やが帰って来たそうな」
彼女は立ち上がって閂を外した。
二人の男女が立っていた。
一人は若い武士であった。一人は武士の妻らしかった。
「何んのご用?」と月子は訊いた。
「顔をお直しくださいますよう」
若侍は小声で云った。恐れているような声であった。ひどくその声は嗄れていた。
「まずおはいりなさいませ」
月子は横へ身を開いた。そうして油断なく二人を見た。
二人は辷るようにはいって来た。