Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme

Aozora Bunko

と、男の声がした。

「なんだか人里が恋しくなった。……もう恐ろしいものはない。……誰に見られても感付かれはしまい。……今までは恐れて逃げ廻わっていた。これからは進んで近付いてやろう。……」

だが源之丞の声だろうか? 百歳以上の老人の、嗄れ果てた声だのに。

「甲府へ参ろうではございませんか。賑やかな武田家のお城下へ。……妾もなんだか人里が恋しくなってまいりました」園女が云ったに相違ない。しかしその声は百歳以上の、老婆の声としか思われない。

二つの人影は動き出した。二人の歩く足に連れ、サラサラと音を立てるのは、枯草が左右へ分れるからであろう。

二人の姿が消えた頃から、裾野の朝は明け初めた。

その日の真昼のことである。

鍛冶屋街道を片輪者が、二人連立って歩いていた。

一人は男、一人は女、男は若々しい武士姿、女も若々しい女房姿、しかし二人ながら首から上は白髪と皺とに埋められた、醜い尉と姥とであった。

能の仮面の重荷悪尉、そっくり老人の顔であった。蟇の形をした大きな痣、それが額にあるために、一層その顔は凄く見えた。

能の仮面の泣き老女、そっくり老婆の顔であった。