Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
第二十一回
一
何んとむしむしと暑いのだろう。旅人一人通っていない。
聖者はいつまでも歩いて行った。放心したような様子である。何か口の中で呟いている。
「力をお与えくださいまし」
聖者は光明優婆塞であった。だがもう今は乞食なのである。
ポツポツ雨が降って来た。と、雷が鳴り出した。
紐のような豪雨が降って来た。嵐が加わって横になぐられ、優婆塞一人へ襲いかかった。だが彼は歩いて行った。
「私をお救いくださいまし」口の中で呟いている。
道が二筋に別れていた。彼は無心に右の方へ辿った。それは細い細い道であった。野宮に通っているらしい。
荒れた野宮の狐格子の中に、一個の生物が蠢めいていた。
纐纈城主、火柱の主、すなわち悪病の持ち主であった。
第二十一回
一
狐格子の中は暗かった。格子を通して外光が、光ということさえ出来ないぼど、幽かに鉛色に射し込んでいた。
手枕をし、足を縮め、海老のように寝ている城主の姿が、ボッと薄赤く光っているのは、身に纏っている纐纈の袍が、微芒を放っているからであろう。
彼は死んだように動かない。だが死んではいなかった。しかし死にかけてはいるのであった。持ちこたえていた悪病が、いまや勢力を逞しゅうし、彼の脳髄を犯し出したのである。