Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
それから、ごはんを、うんとたくさん食べた。おシュン婆さんも、おどろいていた。いつもは朝寝坊でも、試験だとなると、ちゃんと早起をして御飯も、たくさん食べる。男の子は、こうでなくちゃいけない、と変なほめかたをした。おシュン婆さんは、きょうは学校の試験があるのだと、ひとり合点しているらしい。役者の試験を受けに行くのだと知ったら、腰を抜かすかもしれない。
身支度をして、それから仏壇のお父さんの写真に一礼して、最後に兄さんの部屋へ行き、
「行ってまいります。」と大声で言った。兄さんは、まだ寝ているのだ。むっくり上半身を起して、
「なんだ、もう行くのか。神の国は何に似たるか。」と言って、笑った。
「一粒の芥種のごとし。」と答えたら、
「育ちて樹となれ。」と愛情のこもった口調で言った。
前途の祝福として、もったいないくらい、いい言葉だ。兄さんは、やはり僕より百倍もすぐれた詩人だ。とっさのうちに、ぴたりと適切な言葉を選ぶ。
外は暑かった。神楽坂をてくてく歩いて、春秋座の演技道場へ着いたのは九時すこし過ぎだった。ちょっと早過ぎた。紅屋へ行ってソーダ水を飲んで汗を拭き、それからまたゆっくり出直したら、こんどはちょうどよかった。