Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
でも、僕はその人を、僕の生涯の先生だと、きめてしまっているんです。僕はまだその人と、たった一回しか話をした事がないんです。追いかけて行って自動車に一緒に乗せてもらったんです。」
「いったい、どなたですか。どうやら劇壇のおかたらしいですね。」
「それは、言いたくないんです。たったいちど、自動車に乗せてもらって話をしたきりなのに、もう、その人の名前を利用するような事になると、さもしいみたいだから、いやなんです。」
「わかりました。」主任は、まじめに首肯いて、「それで? その人が、春秋座、と書いて下さったので、まっすぐにこっちへ飛び込んで来たというわけですね?」
「そうです。ただ春秋座へはいれって言ったって無理です、と僕はその時に女中さんに不平を言ったんです。すると、襖の陰から、ひとりでやれっ! と怒鳴ったんです。先生が襖の陰に立って聞いていたんです。だから僕は、びっくりして、――」
若い二人の試験官たちは声を立てて笑った。けれども、主任のひとは、そんなに笑わず、
「痛快な先生ですね。斎藤先生でしょう?」と事もなげに言った。
「それは言われないんです。」僕も笑いながら、「僕がもっと偉くなってから、教えます。