Japanische Klassiker mit Furigana
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しぶえちゅうさい
渋江抽斎
Lesen Sie 渋江抽斎 (しぶえちゅうさい) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 166.525 Zeichen · 334 Bildschirme
五百は六、七歳になってから、兄栄次郎にこの事を聞いて、ひどく憤った。そして兄にいった。「そうして見ると、わたしたちには親の敵がありますね。いつか兄いさんと一しょに敵を討とうではありませんか」といった。その後五百は折々箒に塵払を結び附けて、双手の如くにし、これに衣服を纏って壁に立て掛け、さてこれを斫る勢をなして、「おのれ、母の敵、思い知ったか」などと叫ぶことがあった。父忠兵衛も牧も、少女の意の斥す所を暁っていたが、父は憚って肯て制せず、牧は懾れて咎めることが出来なかった。
牧は奈何にもして五百の感情を和げようと思って、甘言を以てこれを誘おうとしたが、五百は応ぜなかった。牧はまた忠兵衛に請うて、五百に己を母と呼ばせようとしたが、これは忠兵衛が禁じた。忠兵衛は五百の気象を知っていて、此の如き手段のかえってその反抗心を激成するに至らんことを恐れたのである。
五百が早く本丸に入り、また藤堂家に投じて、始終家に遠かっているようになったのは、父の希望があり母の遺志があって出来た事ではあるが、一面には五百自身が牧と倶に起臥することを快からず思って、余所へ出て行くことを喜んだためもある。