Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
その土塀の一所から、話の声が聞こえて来た。「どうもこれでは手がつかない」直江蔵人の声らしかった。「神出鬼没というやつだ。出たかと思うと消えてしまう。消えたかと思うとヒョッコリ出る」
「そうさ」と答える声がした。塚原卜伝の声らしかった。「全く変な化物だ。ノロノロとした歩き方だのに、それでどうにも捉えることができない」
「俺はすっかり匙を投げてしまった」
「薬師としては無責任だな」クックッと笑う声がした。
「それもどうも仕方がない。いわば俺の手に余ったのだからな」
「いや俺の手にも余ったよ。と云って火柱の主ではない。得体の知れない例の奴だが、全くあの時は浮雲かった」
「うんあいつか、あいつにも参った」蔵人の声は皮肉に響いた。
「どうやら俺はお前のために、二度命を助けられたらしい」
「礼を云ったがよかろうぜ」卜伝の声は笑っていた。「それにしてもお前は暢気だよ、いかに火柱が現われたと云って、あんな場合に駈け出すなんて、正気の沙汰とは思われないな」
「そうは云ってもあの時は、はじめて火柱を見たのだからな、夢中になるのが当然さ」
「咄嗟の場合、薬箱を投げて、あいつの気勢を反らせたので、お前は斬られずに助かったものの、そうでなかったら今頃は、閻魔の庁に行っているだろう」