Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
真珠色をした太い煙りがその口から立ち上る。緑の隧道の遥か彼方に大斜面が延びていたがすなわち富士の山骨であって、大森林、大谿谷、谷川、飛瀑を孕みながら空へ空へと延している。その中腹に雲が懸かり、雲を貫いて、八の峰が瑠璃色をなして聳えている。
静かに陶器師は眼を開けた。
「卒爾ながらお尋ね致す」言葉の様子が違って来た。「武田家の家人で土屋姓、土屋惣蔵昌恒殿のもしやお身内ではござらぬかな?」
「いかにも」と庄三郎は頷いた。「その惣蔵には甥でござる」
「ははあ」と陶器師はそれを聞くと一層言葉を改めたが、「しからばご貴殿のお父上というは庄八郎殿ではござらぬかな?」
「さよう」と云ったが庄三郎ちょっと言葉を云い渋った。
「こいつ何を云い出すことか。油断はならぬ」と思ったからである。
「おおさようでござったか」陶器師は軽く一揖したが、「そうとは存ぜずとんだ失礼、平にご用捨くだされい。実はな、拙者、庄八郎殿には数々ご恩を蒙ったものでござる。ご子息と聞いてお懐しい。失礼ながらご姓名は?」
「土屋庄三郎昌春と申す」
「まずまずここへお坐りなされ」
こう云うと敷いていた藺の円座を自分で払って押しやった。