Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
信玄自身鍵を取ってギーと宝蔵を開けたのである。と、行列は動き出したが、今度は信玄が先頭に立って蔵の中へ案内する。安置してしまうと行列は静かに蔵から外へ出る。この間少しも喋舌ることは出来ない。咳くことさえ憚るのである。この時信玄は殿として、最後に宝蔵から出て来たが、再び鍵を手に取って宝蔵の戸を閉じようとした。するとにわかに不安になった。
「どうも可笑しい」と呟いたものである。「誰か蔵の中にいるような気がする」
で、じっと隙かして見たが灯火のない宝蔵の内はいわゆる烏羽玉の闇であって、物の文色も解らない。信玄は背後を振り返って見た。規定の人数に欠けた者もない。「心の迷いだ」と口の中で云うと宝蔵の扉をギーと閉じた。それからビーンと錠を下したがその時幽かに蔵の中からただ一声ではあったけれど笑い声が聞こえて来た。――聞こえて来たように思われたのである。
信玄は心には掛かったけれど「空耳」であろうと思い返し、スタスタと廻廊を引っ返した。
さて、その翌朝のことであるが、近習の真田源五郎が信玄の前へ端坐った。
「高坂甚太郎の伝言をお聞きに入れとう存じます」
「何んだ?」