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Japanische Klassiker mit Furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

Lesen Sie 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 142.597 Zeichen · 289 Bildschirme

Aozora Bunko

銭形平次捕物控

一

一

「旦那よ――たしかに旦那よ」

「…………」

鬼になった年増芸妓のお勢は、板倉屋伴三郎の袖を掴んで、こう言うのでした。

「ただ旦那じゃ解らないよ姐さん、お名前を判然申上げな」

幇間の左孝は、はだけた胸に扇の風を容れながら、助け舟を出します。

「旦那と言ったら旦那だよ、この土地でただ旦那と言や、板倉屋の旦那に決ってるじゃないか。幇間は左孝で芸妓はお勢さ、ホ、ホ、ホ――いい匂いの掛け香で、旦那ばかりは三間先からでも解るよ。お前さんが側へ来てバタバタやっちゃ、腋臭の匂いで旦那が紛れるじゃないか、間抜けだねエ――」

「なんて憎い口だ」

左孝は振り上げて大見得を切った扇で、自分の額をピシャリと叩きました。このとき大姐御のお勢が、片手に犇と伴三郎の袖を掴みながら、大急ぎで眼隠しの手拭をかなぐり捨てたのです。

伴三郎の思い者で、土地の売れっ妓お勢に対しては、左孝の老巧さでも、二目も三目もおかなげればなりません。

「それ御覧、旦那じゃないか」

お勢は少しクラクラする眼をこすりました。二十二三でしょうが、存分にお侠で、この上もなく色っぽくて、素顔に近いほどの薄化粧が、やけな眼隠しに崩れたのも、言うに言われぬ魅力です。