후리가나로 읽는 일본 고전
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
吉川 英治의 三国志(一)(さんごくし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 309,839자 · 622화면
「……オオ」
彼女は、ひとりでに出たような声をもらした。桃園の彼方から陽が昇りかけたのだ。金色の日輪は、密雲を噛み破るように、端だけ見えていた。今や何か尊いものがこの世に生れかけているような感銘を彼女もうけた。
「…………」
彼女は、ひざまずいて、三礼を施した。子どものことを祷っているらしかった。
それから、箒を持った。
たくさんの落葉がちらかっている。桃園は村の共有なので、日ごろ誰も掃除などはしない。彼女も一部を掃いただけであった。
新しい莚をそこへ敷いた。そして一箇の土炉と茶碗など運んだ。彼女はもともと氏素性の賤しくない人の娘であったし、劉家も元来正しい家柄なので、そういう品もどこかに何十年も使用せずにしまってあった。
清掃した桃園に坐って、彼女は水を汲みに行った息子が、やがて鶏村から帰るのを、心静かに待っていた。
桃園の梢の湖を、秋の小禽が来てさまざまな音いろを転ばした。陽はうらうらと雲を越えて、朝霧はまだ紫ばんだまま大陸によどんでいた。
「わしは倖せ者よ」
彼女は、この一朝の満足をもって、死んでもいいような気がした。いやいや、そうでないとも思う。