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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1931(昭和6)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 页

青空文庫

これからも、そんな隔てを捨てて、お互に、励まし合おうじゃないか」

「加山、よく言ってくれた。おれはともすると、意志の脆い性質の弱点が出ていけない。これからも、鞭を打ってくれい」

「おれこそ、欠点の多い人間だ。頼む」

二人は、敗地に立つたびに、友情を強めた。感激の手を握り交わして、難路の踏破を誓った。

「さ、すぐに彼奴を調べてみよう」

「無論だ」

と、自身番へ戻って、錆ついた捕物道具が並べてある狭い部屋へ、預けておいた藍弁慶の男をひき据えた。

「おい! 顔を上げろ」

「ヘイ……」

と、男は素直に顔を上げた。

「貴様は連れのあの侍と、どういう縁故のある人間だな。まず、それから申せ」

「連れ?」

と、すこし変な顔をして、

「旦那、あっしに、連れなんざありませんぜ」

「偽りを申すな。あの博物会の中から一緒に出た侍は、貴様の連れに相違あるまい」

「うふッ」

と、彼は吹き出しかけたが、二人の怖ろしい眼に出会って、ぐっと、その笑いを嚥みころしながら、

「冗談じゃございません、あれや、あっしが朝から目につけて来た鴨なんで。……へへへへへ、旦那方だって、よくご存じのくせに、お人が悪うございますぜ」