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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1931(昭和6)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 页

青空文庫

二つの問

言い終って、かすかに、肩で息をついていた。

――すると、何者か、墓石の蔭で、わっと、泣き伏した声がした。

「や? ……」

眼を瞠ると、白紫陽花の戦慄くような女の姿が、ちらと、そこの蔭に見えた。

二つの問

「あっ! 花世じゃないか」

叫ぶや否、老先生は、跳びつくように、虚無僧すがたの彼女のそばへ。

そして、痛いほど、手をつかんだ。

「五百之進どのの引合せか。どうしてこんな所におったぞ。これ花世! 花世!」

「おお、お舅父様」

「なに、お舅父様と? ……ああお前はもう、わしをお舅父様と呼ぶほど親身な気でいてくれるのか。それでは今、ここで五百之進どのに誓ったわしのことばも、そなたは、残らず聞いていたな」

「……思わず泣いてしまいました。ご恩は死んでも忘れません」

「何を言うのだ。親子の間で。……それよりも、そなたは、どうして、ここへ来たのか。まさか、亡き五百之進殿の墓守をしていたわけではあるまいが」

「はい、実は、この紫陽花寺は、富武家も、檀家の一家でござります」

「ム。この縁故は分っておる」

「で。方丈様へお縋りして、ずっと、あれ以来、身を匿っていただいておりましたのです」