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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1931(昭和6)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 页

青空文庫

悪智の尺度

話が、思わぬほうに外れているまに、どんと、船の舳が、何かにぶつかった。

中洲の女橋である。――舟は、大きな橋杭を摺って、橋の腹を上に見た。

悪智の尺度

「あ、いけねえ。その女を、むき出しにして置いちゃ、陸からも、橋の上からも、人目について、怪しまれる」

舟辰は、気がついて、帆を下ろした。

ほかの三名は、あわてて、玉枝のからだを俯向けに倒して、その手足を、板子へ縛りつけた。そして、上から、帆をかぶせてしまった。

間もなく、舟は、数寄屋河岸へついた。病人の客でも連れ戻ったように装って、すぐに、耀蔵だけを、店へ、かつぎ上げた。

「おう、帰って来たか」

土間のもの音を聞くと、待ちかねていたように、二階の梯子口から、老先生の白い髯がのぞきおろした。

「あ、鶉坂の」

「シッ」

と、老先生は手を振って、

「首尾は」

「ただ今参ります」

一同で、耀蔵を、そっと、二階へたすけ上げて、隅へ寝せつけたうえで、

「老先生、ごらんのとおりでございます。四、五日、静かに、養生をしていたら癒りましょうから、ご安心なさいまし」

「大儀、大儀」

老先生は、ななめならず欣んで、

「して、悪人どもは」