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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1931(昭和6)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 页
人焼竈
「オイ、みんな出て来い!」
手をあげると、四方の笹むらや、木蔭や、岩の蔭から――
「何だ、もう済んだのか」
「少し呆ッ気ないぞ」
含月荘の武士どもであった。山いでたちに、革襷を締めこんだのが、十四、五人ばかり、わらわらと飛び出してそこに集った。
不意に、八弥を昏倒させた侍は、
「この通りだ」
と、得意げに地上を指さして、
「ご家老は?」
と、見廻した。
「先に、主水様とご一緒に、如意ヶ岳の作兵衛の小屋へ行って、お待ちうけになっているはずだ」
「そうか。じゃすぐに其奴を引ッ担いで行け」
「心得た」
首を持つ、足を担ぐ、腰を支える。
八弥の体は、人間の波の上に浮き上がった。彼は、宙に足を振って、何か叫んだが、すぐに、昏々と仮死してしまった。
「――それッ、急げ」
と、真っ黒に、そのまま走り出そうとすると、玉枝の笑い声が後ろでひびいた。
「もし、私を忘れちゃ酷いでしょう」
「あ、玉枝どのを」
「そうだ、縄を解いてやれ」
彼女は、麻痺れた両つの腕を空へ伸ばした。
「上手くいったね。――同心なんていう者は、悧巧そうで、案外馬鹿なものさ。ゆうべ、こっちの密談を偸み聞きして、とうとう捕まえ損ねたから、きょうは、わざと私が囮になって、この叡山道の奥まで釣りこんだとは知らないで、人のことを、悪運が尽きたの、何だのと、いい気になって講釈を言うから