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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
昨今の生活の事情を、そういう仕事の完成のためにあてることが出来たら、一つの大した収穫でなければなりません。「伸子」から後の発展、展開は複雑であって、余り歴史的で、片々たるものにはつくし切れないのね。しかし、あれから次の長いものをつなぐ踏石としては、「広場」、「おもかげ」、「乳房」、その他あって、筋は一筋貫いて居りますが。その点で私はたのしみがなくはないのよ。「おもかげ」にかかれている青年の死をめぐる一くさりも、もっともっと描きたいところです。いろいろいろいろ書きたいわ、ねえ。
夜着の裏が切れましたって? 困ったわね。やはりカバーがないと駄目ですね、あの方はカバーなしでしょう? あれは丈夫な木綿でこしらえたのに。でも、夜具の裏が切れるなんて面白い、(面白くないとも云えるけれど、それだけ臥ていらっしゃると思えば、でも女はきらないから、そんな生活の力もっていないから)ね、手袋なしですむようになったら、あの大事なフカフカ手袋すぐかえして頂戴ね、大事、大事にしまっておきましょうよ。もうあんなのさかだちしたってないことよ。お恭ちゃんは、只今顔剃りに出かけています、おしゃれして、親類へ行くのよ。