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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
迚も景観に目をとられるというだけの余裕はなくて、あれよ、あれよといううちにわが手わが足が思わぬ力にかつぎあげられ、こづきまわされて、省線の午後五時のとおり、自分の足は浮いたなりに、体は揉みこまれて車内に入ってしまうという位の修羅です。
年鑑のこと、ありがとう。それから、ユリがこういうことになると、ややそっぽ向きで素通りで、苦笑だって? そうでした? 御免なさい。そっぽ向いたりしていなかったのよ、ところが年鑑は今ごたごたで、手もとに出せません。すぐ見ないのはわるいわね。ホラ又ダラダララインというところね。でもきょうは御容赦。こんどはっきり間違いを自分でしらべておきますから。
私は、僕等の家としては、というところから目を放さず、無限の想像をよびさまされます。私たちの家として何年間か暮して来た間には、住んでいるところがとりも直さず私たちの家で、想像もリアルなのよ。たとえば二階に一つ机があって、下の四畳半に机がおけて、六畳で御飯たべたりいろいろ出来るという工合に。そういう気持で暮しているのね。今のようになると、何とまざまざと、しかも空想的に、僕等の家というものが考えられるでしょう、そこは明るそうよ。