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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
それは十八日に出来ていたのにとりにゆけなかったのです。それをもって、ひどい混む電車にのって、余りひどく圧されるときフーと云いながら林町へまわりました。咲枝大よろこびの大よろこび。私はその様子を見てうれしかったわ、自分の心のたのしい日に、ひとのよろこびを与えてやるのもうれしいというものです。食堂がもとの西洋間に移ったことお話しいたしましたね。あの大きいサイドボールドがやっぱり引越して来ているので、咲枝その鏡に帯をうつしてみてしんからよろこんで居りました。
太郎にとってもきのうは特別な夕方でした。それはね、区役所から、千駄木学校(あすこよ、動坂の家のすぐ裏の)へ入るようにと云って来たから。僕千駄木学校へ行きたいと思ってたから丁度いいやとよろこんで居りました。
その太郎のために私は近所で木綿の靴下を見つけてやって、一年生の間と二年生との間はもつだけ、ああちゃんに買ってやったのよ。あっこおばちゃんもなかなかでしょう?
寿江子に云わすと、太郎は何でもこれこれはこういうものという型通りが好きすぎるそうです、でもそれは父さんが全くそれ趣味だから今のところ真似でしょう。