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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

(自分の経験。それが転身してゆくその面白さ)そういう女の神経。いろいろいろいろ。ね。

こんな小さい作品でも、私は本気なの。長いもののためのウォーミングアップとして。この前の手紙にかいたように、私の内の工合は、全く小説のために適合した流れかたにならなければ、長い小説なんてかけませんから。そして、長い小説も私はうちで書くということを実現したいから。寧ろ一寸そこからはなれて新しく展開させるその気分のために、ちょいちょいしたピクニックを使おうとして。

小説をかいているとき私は喋りたくないの。何をかいているときでもそうですが、だまって、内部が生々して、黙っていることのたのしさがわかってくれるものがうちにいるといいけれど。多賀ちゃんも初めは何だか顔が変るからとっつきにくかったって。私はそういうとき本当に美人だのに。顔みるなり雑談するというような気分になれ切っていて、さもないとむずかしいと感じるのね。黙っている顔に漂っているものはとらえられないから。ましてお恭においてをや。この意味で、細君は旦那さんが留守で温泉ででも仕事しているという方が気らくなのかもしれないわね。