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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
私は曰附の家へ瀬踏に使われたんだとは気が着きませんや。
床屋風情にゃあ過ぎたものを借りやあがった、襖の引手一個引剥しても、いっかど飲代が出来るなんと思って、薄ら寒い時分です、深川のお邸があんなになりました、同一年の秋なんで。
その十畳敷の真中で、昆布巻を極めて手足をのびのびと遣りましたっけ。」
愛吉は吸殻を払いて、
「可うごすかい、さあ寝られません。総鎮守の風の音が聞えますね、玉川の流は響きますね、遠くじゃあ、ばッたんばッたん機織の夜延でしょう、淋いッたらありません。
悪くするとこりゃ狐でも鳴きそうだ、弱りましたね、さよう、一時頃でございましたろうか。」
聞惚れていたお夏は急にあどけないことをいった。
「出たかい。」
余り唐突に聞かれたから、愛吉まごついて、
「へい、何でございます。」
「いずれ何か。」
「最初は、庭に手水鉢があります、その雨戸がカタリといいましたっけ、縁側を誰か歩行いて来ます、変だと思ってる内に、広間の前の処で跫音が留んだんです。へい、」といって一ツ自分で頷いた。
「それだけ。」
「どういたしまして、これからなんでさ。しばらくすると、すッと障子を開けましたが、私が枕を持上げる時には、もう畳を三畳ばかりすらすらと歩行いて来ました。