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さんまいつづき

三枚続

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页

青空文庫

五十

ほんとに可愛いじゃあないかねえ、」とものおもい、もの思う様子で謂いながら、つむりへ手を遣ると、さしていた銀脚の簪を抜いて取った。

「愛吉、ちょいとお見せな、手を。」

「へい、」

「こんな風に預けたの。」と、そのまま手首へはさんだが、よくは入らないから耳の処へ力を入れた、銀は柔かく二ツに分れて、愛吉の手は帳場格子の上に結いつけられたようになったが、双方無言で、やがて愛吉はぶるぶると震えた。

五十

「取ってお置き、それをお前に上げましょう。」とお夏は事もなげに打微笑み、

「それであのお化の念が届くんだわ。」とあっけに取られた愛吉の顔をさも嬉しそうに眺めたが、不意に色をかえて、お夏はちょっと簪を抜いた髪に、手を触れて見て屹とした。この時の容貌は、過般深川の橋の上で、女中に取巻かれて火を避けたのを愛吉が見たそれのごとく、ほとんど侵すべからざる、威厳のあるものであった。しかもあきらかに一片の懸念の俤は、美しい眉宇の間にあらわれたのである。お夏は神に誓って、戯にもかかる挙動をすべき身ではないのであった。

しかるに愛吉が状もまた極めて案外。

その手も引かず渠は色を正して、やや開き直ったという体で、