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さんまいつづき

三枚続

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页

青空文庫

有耶無耶の内は、夢だろうぐらいで私も我慢をしましたけれども、そうどうも手首へ極印を打たれちゃあ辛抱がなりません。とても次の晩からはその家へは寝られませんで、形なしになりましたが、私あはじめてです、いまだに不思議に思いますがね。」

「それッきり逢わなかったの。」

「ええ、もう木賃の方へ逃げました。」

「惜しいことをしたねえ、何かお前に頼みごとでもあったんじゃあないか、それでなくってもまた来た時を待っていて、分を聞けば可かったのにね。」

と身に染みて、お夏は残惜しそうな風情であった。

「今で見ますと、私も惜いことをしたと思います、ですがお嬢さん、その場に臨んで御覧なさい、その気味の悪いことといっちゃあ、口で謂うようなものではないんですから。」

お夏はこれを聞取らなかったほど、何か考えていたが、

「幾歳、」

「十八九で、」

「一昨年のことだって、」

「一昨年でございますよ。」

「一昨年十八九、私と同一年ぐらいだねえ?」

「飛んだことを、譬になすっちゃあ不可ません。」と驚いて言う。

お夏は自若として、

「そして簪を預けたいといったって、十八九で綺麗な女で、可愛らしいお化だこと。