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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
二十三
二十三
愛吉はきょとんとして、ぼんやりあらぬ方を眺めながら、目玉をくるくると遣っていると、やがて外科室のその半開の扉をおした、洋服の手が引込む、と入違いに、長襦袢の胴がちらちら、薄紫の半襟、胸白く、袷の衣紋の乱れたまま、前褄を取ったがしどけなく裾を引いて、白足袋の爪先、はらりと溢るる留南木の薫。
診察室を出て来たが、深川の勝山、まだ世盛の頃で、お夏その時は高島田の、年紀十七であった。
(何某。)とかの筆を持った一人が声を懸けると寝台の上に仰向けになっていたのは、辷り落ちるように下りて蹌踉と外科室へ入交る。
同時に医学士に診察を受けていた貴夫人は胸を掻合せたが、金縁の眼鏡をかけた顔で、背後へ芍薬が咲いたような微妙い気勢に振返った。
その時、打合せの帯を両手に取って、床に膝をつきついてお夏の前に廻ったのは、先刻から控えていたかの円髷の婦人であった。
お夏は衽を取って揃えると、腰から乳の下に下〆を無造作にぐるぐる巻、あてがってくれる帯をして、袖を上へ投げて肩にかけた。附添の婦人は衝と立って背後へ廻る。
愛吉は心なく垣間見た人に顔を見らるるよう、思いなしか、附添の婦人の胸にも物ありげに取られるので、うつむいては天窓を掻いた。