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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

神山は人をくった顔付であった。

「私は元来この場所におられぬ方々については言をさけたい主義ですが、問題が問題ですから、仕方がありません。いったい、千草さんが六時ごろアイビキにでたという、これは諸井看護婦の証言ですよ。ところが、そのほかの人々は六時出発の千草さんを見た人はない。要するに千草さんが何時ごろまで家にいたか、五時ごろまでは見た人がいますけれども、そのあとの一時間は明白ではない。諸井看護婦は六時から八時まではアリバイがあるのですが、実は六時以前に、すでに千草さんが殺されていたとしたら」

それまで、一向にとりあわぬ顔付の一同も、にわかに緊張を隠すことができなくなってしまった。神山東洋は、そんな気配は、気にかけていないように、とりすまして、

「ともかく、田舎のアンチャン、カアチャンの犯罪でも、伏線、偽証、却々額面通りに受けとれないもので、必死の知能、驚くべきものがあるものですよ」

彼は興をそそっておいて、すぐ、話題をうつした。

「さて、次に、内海殺しの場合ですが、このときは、二階の廊下を見晴らす位置に土居画伯が目玉をむいてガンバリ通していらした。だから、二階には犯人がいない筈だというのが通説です。