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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

してみれば、会見の場所は東京か、東京周辺の都市を遠く離れる筈はあり得ない。私は土居画伯あやか夫人の写真を握って東京へ帰り、写真を焼き増して、三十名ほどの知友に協力をたのんで、東京はおろか、横浜、浦和、大宮、千葉、八王子に至るまで、待合、旅館、料理屋、シラミつぶしにきいて廻ったのです。その結果、お膝元も、都心をあまり離れていない焼け残りの待ち合に、御両名の巣を見出したのです。御両氏は、月に一度あるいは二度、必ずそこに落ちあって、静かな半日をたのしんでおられたわけです。その待合の女将と女中は、私の同僚につきそわれて、今朝の一番で東都を出発いたしております。夕方五時には、おそくもここへ到着いたす筈であります」

巨勢博士はポケットから一枚の紙片をとりだした。

「これは、ただ今、友人から、私にとどいた電報です。つまり、今朝の出発を知らせたものです」

巨勢博士は電報をひらいて机上にのせ、それを静かに読みはじめた。

「セミマルノオカミトジョチュウ、ヨテイノトオリ、イチバンニテタツ」

巨勢博士はつぶやいた。「セミマル、セミマル。これは、待合の名前です」

ピカ一は、なお平然として、顔色ひとつ変えない。