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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

ハシゴをかけた跡も、よじのぼったあともありません」と友一郎巡査がムダに張番していたわけではない手並のほどを披露に及ぶ。

「このへんは蚊がいないのか」

「とんでもない。ヤブ蚊の名所ですよ。そこの違い棚に蚊とり線香をいぶす瀬戸物の容器があるでしょう」

「それぐらいのことは知ってる。然し中に線香の灰が残っていないからきいたのだ」

机の上には五十枚ほど書かれた原稿と、五百枚ほどの原稿紙、整頓して、手のふれた跡はない。部屋をかきまわしたあとはなかった。

解剖の結果を待って正式に訊問を始めることにして、この日駐在所に泊りこむ数名を残して鑑識の一行はひきあげる。そのとき一行を送って出たカングリ警部が一人に向って、

「おい、あした、アタピンをこっちへ寄こせ。どうもお歴々のインテリ御婦人が、マンジ巴とからんでいるから、こっちは苦手だ。アタピンに限る」

これを小耳にはさんだから私も驚いて、

「何ですか、アタピンというのは?」

「アッハッハ。きこえましたか。本署の名物婦人探偵ですよ。田舎の警察じゃ役不足の掘りだしもので、飯塚文子と申しますがね。ちょッと小生意気な美人で色ッぽくて、なんですな、ちょッと、からかいたくなりますぜ。