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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页

青空文庫

三

「たいへん、先生にはぶしつけなことを申しあげたようです。どうぞ、おゆるしください。しかし、これは無駄にはならないと思います。ありがとうございました」

彼は、そういつて、部屋を出た。長久保宇治も、ひと足おくれて、出て来たが、二人は、どちらからもすぐに口を利こうとはしなかつた。

三

これだけのことをした後で、京野等志はまだなにかすべきことが残つているような気がした。しかし、それがどういうことであるか、はつきりつかむことはできなかつた。

ともかく、もう、そこにいる用はないということだけはわかつた。

彼は、はるかに続く山の峯に焦らだたしい思いをのこしながら、夕闇につゝまれた、石の多い坂道をとぼとぼと降りて来た。

宿に着いた時は、汗が上着の背をとおし、足のゆびが赤くはれあがつているのに気がついたが、彼は、風呂を浴びる元気もなく、夕食にビール一本をつけさせて、そのまゝ横になつた。

翌朝は、早く眼がさめた。雨戸を自分でくると、朝霧をふくんだ爽やかな風が肌をかすめた。

この時、彼の頭のなかでは、今日、これからとろうとする行動のプランが、ちやんとたつていた。

八時が鳴ると、彼は療養所へ電話をかけ、長久保小萩の退院はいく時頃になるかを問い合わせた。