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ひかりはかげを

光は影を

岸田 国士

彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,262 字 · 276 页

青空文庫

「えゝ、女学校だけでたくさんだつて、父がいうんですもの」

「あとはお嫁入りの仕度ですか」

「あたくしはそんなつもりじやないの。でも、自分でしたいことつて、なかなかできないわ」

「なにが一番したいんですか」

「…………」

その返事はついに聞かれなかつたけれども、彼はこうして、一週に二度、彼女を高円寺駅で待ちうけ、みちみち話をしながら、彼女をその門口まで送るという楽しみをかち得たのである。

たまには、待ちぼうけを喰うこともあつた。しかし、そういう日は、たいてい、彼女の家の二階の窓が開いていて、窓ぎわに彼女の笑顔がうつつていた。

半年はまたゝくうちに過ぎた。彼は学校をやめ、新しく勤めの身となり、味岡小萩を駅で待ち受ける度数も少く、ただ、その代り、駅以外の場所で時々は落ち合う機会ができ、そのうちに、自分の家へも誘い、また彼女の家へも二三度は顔を出したことがある。

それにしても、彼は、自分の感情を露骨に彼女の前に示したことはなく、彼女の方でも、およそそういうキッカケを彼に与える隙をみせなかつた。互いに好意以上のもの、友情というにはあまりに複雑な気持を感じ合いながら、もう一歩というところで、常に彼は踏み止まり、それが明らかにためらいにすぎないと知りながら、そのことに却つて自己抑制に似た誇りを意識して、自ら慰めるという風であつ