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ちからもち

力餅

島崎 藤村

「力餅」研究社、1940(昭和15)年11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 65,974 字 · 130 页

青空文庫

八 たんぽぽ

九 桃としょうぶの節句

それから、こうあいさつしました。

「はい、おとうさん、こんにちは。」

すずめはかかしをばかにしてかかったのです。しかし、かかしは返事もしません。そこへにわかに風が吹いてきましたら、かかしが今にも動きだしそうに見えるので、すずめたちはびっくりして、たがいにチュウ、チュウ呼びかわしながら、逃げるように飛んで行ってしまいました。もともとこのかかしはごくそまつな竹やわらでできたぶきようなものですが、人なみにみのを着、かさをかぶって、しんぼうよく見張りをしながら立っているおかげで、こんな田畑の番人の役がつとまりました。

八 たんぽぽ

たんぽぽはふまれるほど花を多くつけるといいます。いじらしい草ではありませんか。ひどい霜が来ますと、根が浮いてしまって、たんぽぽのような草でも、そうはつぼみを持てません。そこをふまれればふまれるほど、根がしまります。草には草の力がありますね。

九 桃としょうぶの節句

三月三日の節句の祝いの日に、女の子のある家々のありさまは、ひなの家とでも言ってみたいようなものです。かんむりをつけたおそろいの内裏びな、お庭にはたき火でもしていそうな仕丁、古風な五人ばやし、すべて遠い昔のさまをあらわして、山の上に都を定めたころのおごそかでみやびた音楽も聞えてくるような気がします。