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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
小説をかいてゆく空気ってものもあるしね、と仰云ったことは全く当っているのよ。そういうこと考えないのなら恐らく私もこんなにとつおいつは致しますまい。こまこました接触が全然変ってしまう、そのことがいやで不安なのよ、ね。何だかじぶくるようで御免なさい。でもやっぱり云わずにいられないの。
中公の本、すっかり出来ているのを切ったり書き直したり貼りつけたり、経師屋稼業です。一番面倒くさいところを今日大体終り。『都』がきいたら、内容によってかまわないと云ったのですって。何が何だか分らない有様です。そうかと思うと、三木清、直、島木健作、青野、稲ちゃん、それぞれがと云われたり。同じところでも他の一部からは大いに不評だそうだとか。皆が自分の気持でうけとるから。
きょう、雨が降るね、と笑っていらしたこと、私もそう思ってすこし意外でした。でも、そうなのがあたり前なわけなのだし、そうでないのが妙なようなものです。でも、私の細君ぶりが大いに感動されているらしいのよ。人徳があるらしいの。えらいでしょう? ごくあたりまえの人の心もちというものはそういうようなところから動かされてゆくものであるという例ね。