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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
いいでしょう? ここで。もしそうしたらいろいろの意味から環境としてずっと林町よりましです、生活のつつましさ、情愛や。いろいろ。いやさはどうせあるにしろ、それもその性質がちがうから。
私は生活の中に情愛のなさにあきていて、(たとえば、きのう用で出かけてかえって見たら、その娘さんが机の上へ花を新しくさして行ってくれてあるのよ。そんなことをこんなにうれしく心が和らげられて感じる、そういう乾きあがって胸のわるくなるような毎日だから。派出婦って、そうね。)そんなおばあさんや娘と暮してみたいのよ。同じ気がねなら、そういう人にした方がさっぱりしていると感じるの。食事なんかそのうちの程度を基本にして(大変粗末です)そして特別は特別として、やればいいでしょうということも話したの。そして、大笑いしたのよ、どうも私の心持はこうやって粘って粘って見た結果、荷物は林町へやっても身柄は自分のところへとっておく方が自然に思える、と。たとえばいろいろ倹約にしろ、林町ではその家との関係その他で、つつましいながら精一杯のよろこびを獲てゆこうとするいいところがなくて、しわさとして現れるのよ。