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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
浩子さんというひとは正反対に率直なひとよ。小ていな小市民生活の中で大きくなって、きりつめた暮しにおどろかないのは本当に良妻です。本当にどうにかうまくやってゆけばよいと思います。三吾さんと二人のさし向い生活って、いかにも詰らなそうに考えられるけれど、そうでもないのでしょう、とにかく生活は大変よ、ね。
きのうはジャガイモが二百匁(一軒に宛て)配給になって、珍しく夜はジャガイモをたべました。パンもきょうは二ヵ月ぶりで買えるかもしれません。果物のたかさと品不足はひどくて、バナナなんてそれだけは買えないのよ。バナナが三本ぐらいにあとリンゴその他つめ合わせて二円ぐらいよ。お菓子だってそうですし。夏ミカンの姿なし、どこへ消えたのでしょう? ビワ、サクランボ、三尺下って箱のかげを踏まずの程度よ。バカらしくて。レモンの紅茶をのんでお菓子とクダモノの共通の目的を達します。
この間新聞に人口の大部分を占める一〇〇―一五〇円ぐらいの人の生活は最少限50円ずつ赤字だって。それはそうでしょう。よくわかるわ。あなたも準じて御不如意なのでしょうね、余程かしら。これ迄あなたはよく、くりこしをしていらしたけれど迚もああいう芸当はお出来にならないのが当り前だし、余り足りないと困るわねえ。