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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
こういうこと、そして又家のこと。ほんとに一通りのことではないわね、どうでもいいということではないわ、やはりそこに態度があるべきですから。
北原武夫が『都』に、作品の世界の客観的確立ということをあのひとらしくかんちがいして、作品の世界だけが一箇の作家の存在にとってリアルなものであって、実生活は空な抽象だということを会得してはじめて芸術家だ、なんかと云っています。誰かが、この頃の作品の中に作家の生活的実質がうちこまれていないのに不服で、作家の俤のない小説はつまらない、という風に、これも二次的な理解で云ったのに、北原がくってかかって云っているのです。現代の或種の作家のくいちがいや、ピントのはずれたしかも本来は健全な欲求だの、高びしゃでしかも空虚な自己の生活的タイダを肯定している北原の論理や。
実生活がそのまま小説にならない、それでは自然主義時代だ、というところ迄は分っていて、それでは、とその先一歩出るともう混迷に陥っている。その混迷で、現代をしのいで行かなければならないとしたら、およそそれは察しられるというものです。
作家たちの或人々は、人間の進歩の大道は、一つの次から次へさけがたく動くもので、トルストイのモラルの後の世代はどうなるものかという、その自然さ当然さがどうしてものみこめないのね。