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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

七月二十日

持病もってゆきよってのう、すごい奴ちゃ。上のお寺の坊さんは四年になるのにまだかえりません。大方それは坊さまじゃからだろうというこってありますよ、あとからあとからとぶらいせんならんからのう。成程ねえ。そうならかえられっこないわねえ。秋本精米所のおじさんは心持のいい人だが、おかみさんを失ってまるで病人かと思う程げっそりして居ります。うちでなおそうとして手おくれしたのですって、腎臓を。お米の俵をあつかって無理したからだって。ではこれで〆切りにいたします、出すのはあしたにしましょうね、私はおひろいにならないのだから。

七月二十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県島田より(封書)〕

七月十九日  島田からの第三信

いま午後三時すこし前。私はこの手紙を大変珍しいところで書いているのよ。店のあのびっこになったテーブルで。うち中、今日は私一人。お留守番。

午前十一時ごろ電話がかかって来て、友ちゃん出たら、どちらにいらっしゃいます? 川へ行ってです(お母さんのことよ)、一寸およびして来ますからと云っているの。何だろうと思って私が立って行ったら、びっくり間誤ついた顔で、広島からですの、というの。