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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
太郎すっかり眠って大観音のところでおこしました。二重になっておとなしく腰かけて眠ってしまうの、大変可愛い様子です。
四月になったらあなたも太郎に短いお手紙下さい、何しろ小学一年生になりますから。あなたが行った小学校は山の上にあって海が見えたと書いてやってね、どんなに珍しく思うでしょう。
三時から式で神主が来て、それから築地の延寿春という北京料理でお客しました。
花のこと云っていたのに到頭私は花を買いませんでした。だって、何だか、はいこれはお父様私たちの花よと云っておく場所がないのだもの、心の中にしか。形式充満で。札のついた花なんかいっぱいで。私たち三人のことを考えると、国府津の暖炉の前の夜の光景や林町の食堂のことが浮ぶでしょう? 結局式の日の花なんかいらないと思ってしまうの。私たちや寿江子の記念のしかたは又おのずから別なものでもあるのですし。机の上に美しい一輪の花と写真でもおいて、そらね、見ていらっしゃい、やっぱり私たちよく勉強しているでしょう? そういう方がふさわしいわ、ねえ。その写真もスナップのごく日常的なのがいいわ。すべての親愛さは日常の活動のなかに在ったのだもの、その表現はやっぱり何か日常的な特徴をもっていなくては。