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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

二月二十四日

やや雪岱流でね。おやあの女のひと、と私が何心なく云い寿江子わかり、それで私、なるほど散歩になんか出ないわけだと合点したのよ。「御飯のあとなんか旦那さんと散歩してみたいところもちょいとある」但これは寿江子の申し条ですが。うてば響く対手がある二十四時間。ない二十四時間。私がまめに書くけれど、それはカイタモノであることを否定はし切れず、ね。いろいろねえ。五月蠅くもあるが寿江子もいていいわ、寿江子のためにもうちにいていいわ。では本当にもうこれでおしまい。

中公の題はやはりなかなかいいのがなくて。「近代日本の婦人作家」となりそうです。これはいい題なのだけれど。ちゃんと年表がついて、サク引がついて。そういう本らしいことはわかっているのよ。四六版。校正 112 頁まで。では。床に入っていらっしゃるの? そしてかいまきの袖から手を出して何かよんでいらっしゃるかしら。暖いこと? 顔がつめたい、つめたいでしょう? つめたい鼻、でしょう?

二月二十四日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(代筆 封書)〕

今日は、おかしい手紙を差上げます。言葉は、お姉さまがベッドの内から云って居て、字は私が傍のテーブルで書いていると云うわけです。