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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

伸子たちの今いるところが、もう、その生きている者は少ししか住んでいないというヴェルダン市街のどこかなのだった。

「ほかのかたたちも来てから、みんなで御飯にした方がよくはないかしら」

「――あっちの連中の着くのはどうせ十二時すぎだし、もしすましてでもいたら却って厄介なことになる。僕らは僕らだけですませておきましょう」

むしろ二人だけで食事をすることをいそいでいるように、蜂谷良作は、簡単な昼食を命じた。

「見物にどの位時間がかかるのかしら」

「さあ……四五時間のものだろう。しかし、佐々さんはここを見たら、きっとセダンやメッツへも行って見たいって云い出すんだろうな」

「そうお?」

セダンもメッツも第一次大戦史のなかで有名な地名であった。

「ここから行けるの?」

「メッツは、二時間もかからないんじゃないかな、ここからなら――セダンはランスの北だから、シャロン、ね、さっき通って来た、あの辺で乗換えになるかもしれない」

ランスといえばそこにあるフランス中世期の、美しいことで知られているサン・ルミ寺院の尖塔形が伸子に思い出された。

それにしても、ヴェルダンというここの静けさ! どんなにしずかに話しても、その声が自分に耳だつほどしんからひっそりとして、しかも明るいヴェルダン。