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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

――

「ねえ、プロレタリア作家って、ほんとうはどういうの?」

伸子に訳してきかせたあとを一人でよみつづけていた素子が、

「――どういうのって……どういう意味なのさ」

本の頁から顔をあげずにタバコの灰を指さきでおとしながらききかえした。

「何ていうか――規定というのかしら――こういうものだという、そのこと」

「そんなことわかりきってるじゃないか」

すこし気をわるくしたような声で素子が答えた。

「労働者階級の立場に立つ作家がプロレタリア作家じゃないか」

「そりゃそうだけれどさ……」

革命後にかきはじめた作家のなかには、プロレタリア作家と云っても、偶然な理由からそのグループに属している人もある、と伸子には思えた。

「ポリニャークなんかもそうじゃない? 革命のとき、偶然金持ちでない階級に生れていて、国内戦の間、ジャガ薯袋を背負って、避難列車であっちこっちして『裸の年』が認められたって……プロレタリア作家って文才の問題じゃないでしょう?」

「だからルナチャルスキーが気をもむわけもあるんだろうさ――前衛の眼をもてって――」

伸子は、ひょっと、自分がもし日本から来た女の労働者だったら――工場かどこかで働くひとであったら、同じ事情のもとでポリニャークはどうしただろうか、と思った。