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さんまいつづき

三枚続

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页

青空文庫

四五軒筋違の向う側に、真赤な毛氈をかけた床几の端が見えて、氷屋が一軒、それには団扇が乗ってるばかり、涼しさは涼し、風はあり、月夜なり。

氷屋の並びに表通から裏へ突抜けた薬屋の蔵の背があって、壁を塗かえるので足代が組んである、この前に五六人、女まじり、月を向うの仕舞屋の屋根に眺めて、いずれも、蹲って雨上りに出た蟇という身で居る。

「え、もし。」

「さようでございますね、」

「どうでしょう、」

と口々にどれが何をいうのか知らず、低声でひそひそ。

「ねえ、おい、」

「どうだろう、」

「そうさな。」

時々吸殻が呼吸をして、団扇が動くわ。

「構わず談じようじゃあねえか、十五番地の差配さんだと、昔気質だから可いんだけれども、町内の御差配はいけねえや。羽織袴で杖を持とうという柄だもの、かわって謂ってくれねえから困るよな。」

「むむ、だが何しろ打棄っちゃあ置かれめえ。」

「もし、確に不可ますまいね。」

ちと老けた声で、

「されば宜しくござりません、昔から申すことで、何しろ湯屋で鐘の音を聞くのさえ忌むとしてござります。」

「そして詰る処、何に障るんですね。」

「いえはじまりは地震かと思うてびくびくしていたんで、暑さが酷かったもんだからね。