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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
それという時の要心だ、私どもじゃ、媽々にいいつけて、毎晩水瓶の蓋を取って置きました。」
「へい、火事ならまあ、蓋を取る内も早いが可いというんでしょうが、地震に水瓶の蓋を取って置くはおかしいね。」
「理詰じゃあねえんでさ、まずいわばお禁厭さ。安政の時に家中やられたのが、たった一人、面くらって水瓶の中へ飛込んだ奴が、不思議に助かったと謂いますからね、よくよく運だ、あやかるだけでも可うございましょう。」
「お待ちなさい、して見ると鉄さん。」
「ええ。」
「お前さんがこの頃また毎晩色ものの寄席へ行くのはやっぱりそこらの地震除から割出したもんだね。」
「何故、何故、ええ御隠居。」
「麹町の人だがね、同一その安政年度に、十五人の家内でたった一人寄席へ行っていて助かったものがありますわい。」
「ざまあ見やがれ、俺が寄席へ行くのを愚図々々吐しやがって、鉄さんだってお所帯持だ、心なくッて欠厘でも贅な銭を使うものかい、地震除だあ、おたふくめ、」
「おや、それじゃあ地震よけに、いつも寄席に行って、お前一人助かる気かい。」
「何だと。」
「いいえさ、お前一人助かれば女房は可いのかよ。」とそのかみさんか、女の声。